HPVV自治体議連の目的
<議連の目的>
本自治体議員連盟は、全国若手市議会議員の会における子宮頸がん予防に関する研修をきっかけとして、令和3年8月に準備会を設立し、令和3年11月9日に設立総会を行い議連の発足を致しました。
これまでの歴史と議論を踏まえて、国民の公衆衛生と福祉の向上という観点から、定期予防接種であるHPVワクチンの積極的勧奨の再開を国に強く求めること、9価ワクチンの推進をしていくこと、また積極的勧奨差し控えにより接種機会を逃した女性の救済を含め、HPVワクチン接種の推進および啓発を主な目的とします。
医師をはじめとした医療関係者の皆様、自治体をはじめとした関係機関の皆様、そして何より国民の皆様の広範なご協力をよろしくお願い申し上げます。
<HPVワクチンをめぐる混乱>
子宮頸がん予防ワクチンの積極的勧奨の一時差し控えをめぐる問題は、新型コロナウイルスワクチンを除けば今世紀において最も大きく政策が健康に影響を与えたワクチンと言えるでしょう。
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、女性の約8割が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルスです。
子宮頸がんをはじめ、複数のがんや疣などの発生に関わっていることがわかっています。近年は若年層の子宮頸がんが増えており、その発症のピークは30~40代、時には妊娠・出産を考える前に子宮や健康を失うに至る女性が増えています。なかでもHPV16型と18型は急速に前がん病変や子宮頸がんへ進行したり、「腺がん」という検診で発見されにくく治療が難しい子宮頸がんに進展することが知られています。
16・18型への感染はHPVワクチンによって防ぐことができます。小学校6年~高校1年相当の女子を対象に、平成25年(2013年)4月からHPVワクチンの定期接種がスタートしました。
しかしながらその直後にHPVワクチンの有害事象が報道され、「国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期予防接種の積極的勧奨を一時差し控える」と厚生労働省が勧告を出したまま、今日に至っています。
<HPVワクチンと子宮頸がんに関するファクト>
2013年以降、有害事象として報告された歩行障害などの多様な症状が、薬剤に起因する副反応であるかどうかが厚労省の検討部会で検討され、2014年には発症時期や特性に一定の傾向が認められないことなどから副反応とはいえないという結論に至りました。
また、多様な症状の発生について検討した国内の大規模な疫学調査では、HPVワクチン接種後に有害事象として報告された24の症状について、ワクチンを接種した群と、接種していない群との間で、発生率に有意差がなかったことが明らかにされました。
しかし、ワクチン接種の有無にかかわらず、歩行障害などの多様な症状を訴える女性がいることは事実です。国は、接種後に発生した多様な症状をきちんと診断し、薬剤との因果関係を検証していくために、痛み等に関する専門医療機関を各都道府県に設置しました。この診療体制を地方自治体で充実させ、実効性あるものにすることも、地方自治体の役割です。
※薬剤と因果関係のないものも含め薬剤投与後に認められたすべての出来事を有害事象といい、薬剤との因果関係が明らかであるものを副反応といいます。
<HPVワクチンの有効性に関して>
その後多くのエビデンスが積み上げられ、HPVワクチン接種を早期に取り入れた豪州・英国・米国・北欧などの国々では、ワクチン接種者において前がん病変や子宮頸がん(進行がん)の発生が有意に抑制されていることが報告されました。
国内でも新潟県や秋田県・宮城県・愛媛県松山市における臨床研究で、ワクチンを接種した20歳~22歳の女性においてHPV16・18型に起因するがん検診の異常などが減少したという結果が出ています。
日本産科婦人科学会等の専門学術団体は、子宮頸がん予防のためにHPVワクチン接種の積極的勧奨の再開を国に対して強く求める声明を発表しました。
厳然とした事実として、国内で年間3万4千人強の女性が上皮内癌に、約1万人が子宮頸がん(進行がん)に罹患し、約2,800人が死亡しています。
積極的勧奨を差し控えた期間に定期接種の機会を逃した世代においては、防げたはずの子宮頸がんに約17,000人が罹患し、約4,000人が死亡することが確定しており、このまま接種率の低迷が続けば、1日当たりさらに3人ずつ、守れるはずの命が失われていくことがわかっています。
この命への責任は、誰が背負うのでしょうか?